水素発電と地熱発電の組合せによる可能性

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水素発電と地熱発電の組合せによる可能性について、それぞれの発電方式の概要を説明した上で、両方式の組合せが有効となるケースについて検討します。

1.地熱発電とは

地熱発電とは地熱を用いて行う発電のことです。地熱は火山活動により得られる再生可能エネルギーです。環境保全とエネルギー安全保障の観点で火山活動地域を有する国では地熱発電の開発・利用が推進されています。

地熱発電の原理は、発電機に連結された蒸気タービンに地熱により生成される蒸気を導入することで発電機を回転させて電力を得るというものです。

温泉を観光資源としている地域も多く、温泉の枯渇を懸念する観光業界や自治体から賛同を得られ難いことが挙げられますが、地熱発電の長所は、太陽光発電、風力発電と異なり天候、季節、昼夜によらず安定した発電量を得られる所にあります。

2.地熱発電と水素発電の組合せ

地熱発電と水素発電の望ましい組合せには3つパターンがあると考えます。それぞれのパターンのポイントを以下で説明します。

  1. 山岳地域での地産地消

送電網が十分に整備されていない山岳エリアで地産地消が期待できます。

地熱発電をベースロードとし、木質バイオマス(林業)発電をピークシェイブ電源、太陽光、風力による発電を運用できます。太陽光と風力による発電量が余剰となる場合には、電気分解により水素を生成。木質バイオマスをガス化する技術は確立されているため、生成した水素を混ぜ合わせてガスタービンで水素発電します。遠く離れた需要地に電力供給するための送電網の構築が不要となるので建設費が安価となる点は大きなメリットです。また、自然保護地域の環境保全に貢献するので地熱発電所の環境アセスメントにおいても有利となります。

  1. 離島での地産地消

日本には約300の有人の離島があります。離島へのエネルギー供給は本土からの海底ケーブルによる送電か、船により輸送される重油等を燃料とした発電です。いずれも初期投資コストおよび運用コストが本土と比較して著しく高くなってしまいます。また、運用面では台風等によりエネルギー源が絶たれるリスクがあり、昨今の異常気象によりそのリスクは益々高まっています。

火山のある離島ではベースロード電源として地熱発電を設置します。加えて、風力による発電を行い、電力が余剰する時には電気分解による水素を生成します。電力が不足する際にはピークシェイブ対応として水素発電を行えば安定した電力供給が可能となり、離島のエネルギー自給自足が実現する可能性があります。台風で本土から船がアクセスできない時に大きな発電量を見込める風力発電は離島のエネルギーセキュリティ向上にとって非常に有効と考えられ、注目が集まっています。

  1. 分散型電源としての地熱発電と地域外での水素発電

大規模な地熱エネルギーを保有するが、人口や産業が少ない地域については、地熱から得られる電力は常に大きな余剰となります。山岳地帯や離島は送電網が弱く大容量の電力を送出できないケースが多くなってしまいます。莫大なコストのかかる、あるいは環境保全面で実現が難しい大規模な送電網の整備を諦め、地熱発電所に電気分解による水素生成プラントと液体水素製造プラントを併設します。そして、電力需要が多い地域にローリー車を用いて液体水素を出荷し、水素発電を行うことが有効と考えられます。

国内の大中規模の地熱発電の発電出力は20~50MWが多く、発電所内で消費する電力や液体水素を製造するための電力を無視すると、5,000~12,500Nm3/h(4.5~11.2ton/h)の水素を製造することが可能となります。燃料電池車両(トヨタミライ等)の燃料タンクが5kgであることを考えると相当な量のグリーンエネルギー由来の水素を供給できることになります。

多くの電気を消費する地域に地熱由来のグリーン水素を供給し、水素発電による電力供給を行うことは、トヨタ自動車株式会社を筆頭に再生可能エネルギーの使用を推進している企業にとっても喜ばしいことと想像できるでしょう。

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